イカサマ釣り師、誕生!なのだ
2013年 12月 11日
明らかにって訳じゃないのだが、何となく分かるのだ・・・
部屋にいる時間が長くなったり、ふと、見せる暗い表情だったり・・・
何より本気で笑うことが少なくなってるような気がして。
何か悩みがあるようなのだ・・・
今までも悩んでることはあったよ。
嫁に愚痴っぽく打ち明けたり、それとなく喋ったりしていたのだが、嫁に聞いても、
『何だろね、何かあったようだね・・・』
今回は誰にも言わず、一人で悩んでるようなのだ・・・
オラも同じ年頃には、誰にも絶対知られたくない悩みって、あったからね・・・
たぶん・・・いや、間違いなく部活で何か悩み事があるようなのだ。
大会が近いこともあり、放課後の練習はもちろん、朝練でオラより早く出かけ、オラよりずっと遅く帰る毎日なのだ。
ひたすら頑張っても上手く出来ずに悩んでいるようだべ・・・
そんな、間もなく大会本番という日に、息子を釣りに連れて行こうと思ったのだ。
「今日、久しぶりにイカ釣りに行ってくるぞ、お前が中学に入ったら連れてく約束だったよな。今日一緒に行くか?」
『マジか~、行きて~!・・・でも、夜まで部活だよ・・・大会も近いし・・・』
「んなもん半日休んだって何も変わらんって。1分息止めてから顧問の先生に腹が痛いって言えばバレないって!」(ひで~親だな)
ってなわけで、震災以降、初の海釣りへと出かけてみたのだ。
岸壁がまともに残る場所なんてほとんど無くてね、安全に釣りが出来る場所を調べて来てみたのだ。
お~し、スミ跡もしっかり残ってるじゃ。
ほれ、これがエギってやつだべ。こいつをイカサマに抱かせてやるのだよ。
息子はルアーのキャスティングは初めてだったからね、明るい内に投げ方を教えてやったのだ。
「こうやって、後ろに振りかぶった勢いを利用して、竿を曲げて前に飛ばすのだよ。」
『マジか~、スゲ~!』
「んで、こうやって竿をしゃくっては止め、しゃくっては止めて、死にかけの小魚の様に動かして、今狙われたら逃げられませんよ~って感じでイカサマを誘うのだ、解ったか?」
『マジか~、早く釣りて~ぜ。』(マジか~、は息子の口癖なのだ)
陽が落ちてきたから、そろそろ釣れ始めるころだべ。
ほ~れ、ズシッと乗ったべ。
こいつは良い型だべ。
『マジか~、イカが黒いぜ。』
「そりゃあイカがイカってる色だべ。」
『・・・・・・』
『ん?なんか竿が重くなったよ・・・マジか~!!イカが付いてるよ!』
お~!初イカサマだじゃ、悪くないサイズだな。
んでも、真っ暗になると、息子はすっかりキャスティングが出来なくなってしまったのだ・・・
エギが前に飛ぶことが少なくなってしまったのだよね。
後ろや真上、足下にエギが飛んでって、何個かエギをロストしてしまったべ。
「無理に投げようとするから飛ばねんじゃねえの?一度後ろで止めて、投げやすいようにやってみろ。」
『マジか~、飛んだぜ~!』
「ほれみろ、行き詰まったら一度崩して組み立て直せば、ムキになって忘れてたことも思い出す事だってあるべ。何だってそうだべ。」
『マジか~、また来たよ。これで7対3だね。』
「なぬ!?生意気に勝負するつもりか?オメーに一番釣れるエギを付けてやってんだよ!」
『また来たよ。これで同点だよ。』
「うるせ~!そりゃあ教え方がいいからなんだって。調子のんじゃね~ぞ!」
そんな頃、嫁からメールが届いたよ。
【釣れてますか?帰りが遅くなってもいいように、二人で寿司でも食べに行ってきます。】
「おいおい、我が家の女組は寿司を食いに行くらしいぞ。」
『マジか~、んじゃ俺らも何か食って帰ろうぜ!』
「んだな、オメーはオヤジより釣りやがったし、十分だべ。」
帰りに二人でラーメンを食ったよ。
寿司とラーメンじゃ差があるけどね、ま、財布の事情によるのだけれど・・・
美味いラーメンだったよ。
帰りの車の中で、息子は寝言言ってたよ・・・
ププッ、こいつ、イカ釣ってる夢見てやがるな・・・
家について、みんなの前で言ってやったよ。
「お前、車の中でイカ釣ってる夢見てただろ~?寝言言いながら手が竿しゃくる動きしてたぞ。笑うの堪えるの大変だったんだからな!」
『マジか~!ウソだろ~!覚えてね~よ。信じらんね~!!』
家族みんなで大笑いしたよ。
涙が出るほど・・・
息子の本当の笑顔を久しぶりに見た気がして、また涙が出そうになってね・・・
嫁は笑ってるのか泣いてるのか解らん状態だったけど。
ほれ、明日も朝練だべ?イカ刺し食って早く寝ろじゃ!